僕たちが距離コンを始めるときに話し合ってまず最初に決めたことは、歩行ロボットを作ろうということでした。

初めはみんなどうやって歩かせようかとなやんでいました。 ゼンマイのロボットのように上手く歩かせる方法はないだろうか・・・、みんな頭をひねるところです。 車をはしらせるという意見やペットボトルで吹っ飛ばすという意見も最初から出てはいたんですが、班長の僕としては初志貫徹したいという思いでした。

悩むこと2時間、班員の一人が素晴らしい名案ならぬ迷案を思いつきました。 それはなんと、ロボットに重りの乗った台車を引かせようというものでした。 みんな耳を疑うところです。 その歩くロボットさえ決まっていないのに、そんなことができるはずがありません。

しかし、その説明の続きを聞いて納得しました。 動力は台車におき、ロボットが車を引いているように見せかけるのです。 こんな感じでいいんじゃない??悩み続けていた班員たちは、この半分妥協してしまっている意見にみな賛成をしました。 これからどんどん主旨がかわっていくのですが・・・。

台車が動力になるのですから、結局車を作るのと同じです。 僕たちの班は、Body班とMotor班の二つに班員を分け、それぞれ作業をすることにしました。

モーターは三極モーターを作ろうということになりました。 インターネットで基本的な仕組みを調べたり、他の班の人にアドバイスをもらったりして、基本的な設計をし、すぐにつくりだしました。

最初作り出した僕達は全くのど素人ぞろいだったので、鉄っぽいものにたくさん銅線を巻けば強いモーターができると信じていました。 最初はM6のボルトになんと3~4千巻き(実は巻き数もあまり気にしていませんでした・・・)。 それが三つもあるので、大変でしたが、手回しドリル使うという裏技を使いながら、やっと三つのボルトに銅線を巻きつけ、モーターが出来上がりました。

モーターの仕組みは理解できてはいたので、回るはずと胸を膨らまして、モーターに二枚の磁石と整流支をちかづけました。 「なんでまわらんと????」第一声です。 そう、モーターはうんともすんともいわず、ただただ静止しているだけでした。

原因はなんなのでしょう。 テスターを先輩たちから借りてきて漏電や断線をチェックしましたが、明確な理由が見つかりません。 そして、誰かが一番基本的なことにきずきました。 「これって電磁石になってるの??」早速調べてみました。 ・・電池をつなげてみました。 ボルトにワッシャーが一枚もつきません。 ・・・なぜ?。

そう、ボルトの材質が鉄ではなく、ステンレスだったのです。 理系人間としては馬鹿としか言いようがありません。 OTZ。 鉄とは違い、ステンレスは透磁率がとっても小さいので、ボルトがほとんど磁化しないのです。 それに気づいた僕はこのモーターにささげた僕のゴールデンウィークは何だったのだろうと、呆然としてしまいました。

この大失敗の後、またも同じように失敗は続きました。 次の問題は巻きすぎということでした。 六ミリの鉄のボルトに千五百回も銅線を巻き、自信満々でワッシャーにボルトをちかづけましたが、ちょっと持ち上がるだけですぐ落ちてしまいます。

実際、銅線といえど、抵抗はちゃんとあり、僕たちの選んだ銅線が細かったということもあり、その電磁石の抵抗はものすごく大きいものになっていました。 そのことで、流れる電流が、著しく小さくなり結果的にできる磁界もかなり弱いものになっていたのでした。

いろいろな経験を重ねて(失敗はこれだけではなく小さいものから大きなものまで数えると多すぎて数え切れません)、結局M5のボルトに500回巻いたものが一番良いという事が分かってきて、試作の三極モーターがやっと回りだしました。 ここまでに2週間以上かかっており、本当にうれしくて泣き出しそうでした。

一回まわりだすと人間ついつい欲目が出てしまうもので、三極から六極、六極から十二極へとボルトの数は増え(極数が増えればいいというわけではないということが後で分かりましたが・・・)自分で言うのもおかしいですが、なかなかかっこいいモーターへとなっていきました。

モーターができてからも、Bodyの方は失敗続きでしたが、人力飛行機の翼で使う発泡スチロール(スタイロ)の余りをもらって来て作り、なんとか軽量化しました。 また、ロボットの人形も作り、足が動くような仕組みもつくりました。

いよいよ大会の日、僕らのモーターは元気良く回ってくれて、素晴らしい結果を残してくれました。 ただ、気がかりだったのは、記録を測定する時にロボットが(邪魔だという理由で)無くなっていたということです。 まあ、初志は貫徹されなかったという事です。(苦笑)

最後に、このレポートを書くにあたって、僕が一番中心となって働いたモーターの部分を大きく取り上げてしまいました。 しかし、車体を作るときも、ロボットの足回りを作るときもいろんな失敗があり、感動がありました。 が、まとめて感想を言ってしまえば、失敗からもっといいものができる、ということを本当に深く学んだ気がします。 一度失敗してしまうと、作業はとまってしまいます。 でも、そこであきらめるのではなく、じっくりと耐えれば何かより良い解決策がうまれてくる。 そんなきがします。

距離コンは本当にたのしかったです。 ありがとうございました。

東京工業大学 四類 片山 牧人

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