NATS大会(エレキ編)
13/12/15 21:43
spe


さて,というわけでこの記事では今回の大会でエレキが行った回路の工夫の話をしようかと思います.

今回のコースはアップダウンがなだらかであり,大半の区間を惰走するようなエレベーションとなっています.したがってモーターは鉄損の少ない特殊電装のアモルファスコアモーターS13744-270Rを用い,後述の回路により端子電圧はある程度上げることができるため,シミュレーションの結果ギア比は6.25としました.
そして車載回路の回路図は以下です(サムネイルではわかりづらいかと思いますが).
NATS大会回路構成.PNG
車載回路図
今回の大会でも鍵となるのは以前菅生大会でも使用したDC-DCコンバーターです.今回はこいつをどのように使うのかというと,主にモーターの端子に流れる電流をボリューム指令値でフィードバック制御し,電池があたかも電流源に見えるような変換をするようにしています.
等価回路1.PNG
車載回路の等価回路
しかしこのままだと特電アモルファスの電圧が動作範囲の14V~30Vからはみ出てしまうので,フィードバックに優先順位をつけ,SIDE_A電圧が16V以下,もしくは30V以上になるような場合にはボリューム指令値を無視し動作電圧内に必ず収めるようなプログラムとしました.
このような制御を行うことにより,発進時以外にはモーターコントローラーのボリュームは常にフルボリュームにし,モーターの巻線電流の平均値を効率のよい範囲に簡単に収めることができるようになりました.
いままでは上り坂の際などは巻線電流を効率のよい範囲に収めるためには,ドライバーがレース中にリアルタイムで巻線電流をモーターの端子電流とボリュームの開き具合いから推測し,効率のいい範囲に制御しなければならなかったのですが,このシステムの導入によりこの煩雑な作業が要らなくなり操舵などに集中できるようになりました.
見ての通り,この回路構成ではDC-DCコンバーターの効率と信頼性が非常に重要である(これが故障したらまったく走るとができなくなる)のですが,菅生大会で二時間きちんと動作したこと,事前の効率測定からNATSで使うはずの電圧・電流域で常に効率97%以上になることが確認されたため,このような構成としました.

さて,この回路を使った時のロガーのログ一周分を下に示します.
20131116NATS本戦_Revised.png
NATS本戦のログ
赤が電圧値(目盛は左),緑が電流値(目盛は左),青が車体の速度(目盛は右)となっています.なお,この電流電圧の値は電池の電流電圧の値です.したがって,DC-DCがモーター電流を定電流制御している様子は直接には見れません.なお,このグラフの始点はバックストレートの山を登り切った直後のところになっています.
去年のルーモスのログと比較すると分かる通り,電池電流は非常に滑らかになっており(これは平滑用の電気二重層キャパシタの効果もありますが),モーターコントローラーのボリュームをドライバーがほとんど動かしていなかったことが分かるかと思います.また後半のバックストレートの部分では速度がほぼ線形に増加しておりモーターが定トルク駆動,すなわちモーターの巻線電流の平均値がDC-DCにより一定になっていることもわかります.
大会終了後,ドライバーに実際に聞いた所「電気系の操作はかなり楽だったよ」と返答をもらったので,私としては満足なところです.

さらにログデータを解析してみると,電池からは約70Wh取り出せていたようで,これは定格値72Whに迫る勢いでした.これは一昨年のGungnirが約62Whしか取り出せなかったことを考えると,過充電のノウハウもそれなりの域に達したと思えるものでした(今回の大会ではCO2を排出しての充電は禁止なので予備の鉛蓄電池から大会用電池に充電しました).

さて,実は私は今回のNATSの目標周回数として45周を設定していました.現実のところは42週だったわけですが,以上のようにモーターの効率を良くする工夫を行い,さらに電池自体が取り出せるパワーを過充電によって引き上げてなおGungnirを1周だけしか上回れなかったことに関しては残念に思います.
これの原因の1つはおそらくアライメントの調整を怠ったことであると思われます.
ギア比が6.25に確定した後モーターの軸に取り付ける小ギアの注文をしたのですが,これが届くのが予想外に遅れ実際に装着出来たのが大会前日の夕方でした.
この時積み込みなどの作業が押してしまっていたため,菅生大会で調整したから大丈夫だろう,と結局アライメントの調整をせずに会場入りし,さらに本戦前は新しく取り付けたギアのバックラッシュ調整に時間を取られてしまいアライメントをどうにかする暇がありませんでした.

もう1つの原因は私の指示ミスによるものです.
車載回路図をみると分かる通り,大会終了間際に坂道で止まってしまった場合には電池のブレーカーを切ってキャパシタのみからエネルギーを絞り出し,それでもって坂を登り切る算段を立てていました.これは坂道で止まってからある程度の時間をおいて電池からキャパシタへエネルギーを渡し,電圧をそれなりに上昇させてから行わなければあまり意味がありません.
大会が残り五分となってSTRADAが坂道で止まった時,私は当然すべきである「ある程度の時間をおいて」という段階をすっ飛ばして,すぐに電池の切り離しをするようドライバーに指示してしまいました.頭の中やモーターベンチで何度も行ったはずのこの操作をふっ飛ばしてしまうなんて,当時の私は何を考えていたのやら.......このミスのせいで登れれるはずの坂を登り切れず,最後のあがきでもう一周を追加することができませんでした.

以上のように今回の大会では後半に示したいくつかの失態とミスにより,全体順位をあまり伸ばすことはできませんでした.しかし前半に示したようなエレキのパワー系の回路そのものはかなり良い物ができたと思っております.更に今年度の大会はそれまでと違い,ほとんどの大会で2時間を走りきったログデータを残すことが出来ました.

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私がエコノムーブで活動をするようになってから約2年半,この間にエレキ班の技術力とノウハウは大きく進歩を遂げたといっていいと思います.総合編の方にも書きましたが,後輩たちには是非これらを踏まえて我々以上の結果を残していって欲しいと考えています.
色々と書き足りないことはあるのですが,そろそろ文字ばかりでだれてくると思われるので後は後輩向けの引き継ぎ資料にでも書いていこうかと思います.
繰り返しになりますが,今まで様々な支援や応援,アドバイスをくださった方々,本当にありがとうございました.
引き続きMeisterエコノムーブ部門をよろしくお願いします.


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