どれほどの速さで巻けば、桁にまた会えるのか
二〇〇九年の秋。上田との再会を果たすため、僕は次第に少なくなる差し入れの中を上田マンドレルの待つPCルームへと向かった。
黒い鉄マンドレルの上に1ply目のシートが交差した。中心線の引かれていないシートを見て僕は鈍い光を放つ蛍光灯を見上げた。あの日、あのシート切りの日、がんばってシートを切ってくれた一年生を横にきちんと確認をしなかった自分がひどく恥ずかしかった。
約束していた時間を過ぎ、上田マンドレルはだんだん冷たくなっていった。ヒューズの切れた電熱線は、電装班が手を尽くしても再び熱を放つことはなかった。
2ply目の全通のシートを貼るには、保持するときに使う手袋の数がどうしても足りそうになかった。退屈そうに待っている周りのみんな、じわじわと流れていく時間、手袋を買いにスーパーへと走る僕を心細くさせていった。たった1分がものすごく長く感じられ、時間ははっきりとした悪意を持って僕の上をゆっくりと流れていった。僕はきつく歯を食いしばり、ただとにかく泣かないように耐えているしかなかった。
――あの人がいる場所にくると、胸の奥がすこし苦しくなる。
「ねぇ、秒速0.3ミリなんだって」
「えっ、何?」
「テンションテープを巻くスピード。秒速0.3ミリメートル」
秒速300マイクロメートルって言ったら少しは長い気がする。