□実験日
9/19,20
□実験目的
・±45°層のスパイラル巻きを試してみる。
・フランジが最外層となるプライ構成を試してみる。
・プリプレグシートの保管は一般に−18℃で6ヶ月とされているが、常温でほぼ1年間放置されていた昨年度のプリプレグシートが使用に耐えられるのかを破壊実験を行って確かめる。
□使用プリプレグ
24t@
重さ 229.4 [g/m^2]
CF目付 149.7 [g/m^2]
RC 34.73 [wt%]
成型厚み 150 [μm]
□ply構成
[ 90 / 0 / 0 / +45 / -45 / 90 / F90 / F60 ]
桁に曲げがかかった時に最大曲げ応力がかかるのは最外層であるから、そこに0°層があったほうがよいのではないかと思い、このプライ構成にしてみた。(昨年度はフランジ層の上の最外層に90°を用いていた。たとえば[ 90 / 0 / 0 / +45 / -45 / F90 / F60 / 90 ]。)
また、今回から45°層をスパイラル状に巻くことをやってみることにした。(通称スパイラル巻き)これを試そうと思ったのは、繊維が途中で切れていてはねじり剛性を受け持つ45°の効果に疑問があると思ったからである。
□製品
φ85 [mm]
4700 [mm]
□実験方法
中央をロープで縛ってそこから両側に1.4,1.6,1.8,2.0,2.2[m]に5kgの錘を外側から1個ずつ吊るしていき、それぞれ4個までかける(予定だったが後述の理由から1.3,1.6,1.9,2.2[m]に5kgの錘を外側から1個ずつ吊るしていき、それぞれ6個までかけることになった)曲げモーメントをかける。中央から0.5[m]のところにフランジ方向・T曲げ方向の4箇所に長手方向にひずみゲージをつけ、錘をかけてバランスをとったのち、ひずみを測定する。まずT曲げ実験を行った後、フランジ方向に荷重をかけ(以下F曲げと略記)、桁が破断するまで錘を吊るしていく。桁が折れた時点での曲げモーメントから破断応力を求める。
□実験結果
T曲げ実験はうまくいったが、F曲げ実験の途中でひずみゲージがおかしな値を出し始めた。これはどうやらひずみゲージが桁との接着面においてショートしていたためらしい。ひずみゲージを付け直すのは時間がかかるため、F曲げ実験を翌日に延期することになってしまった。
翌日はひずみゲージを中央から0.6[m]のところに短絡しないように付け直したためうまくいっていたが、予定していた錘をすべて吊るしたにも関わらず桁が折れなかった。そこで内側の錘を外側に吊るすことで対処することにしたがそれでも折れず、一つの地点に錘12個(一つのS字フックに6個)の状態は危険と判断し、桁試験を中止した。
□考察
破断応力については結局、桁中央で最大曲げ応力が 1.28[GPa]になるまで荷重をかけたにも関わらず桁は折れなかった。昨年度の桁実験で最大 1.234[GPa]までもった桁もあったが、昨年度の実験桁で24t@を使ってply構成が似通っているものは 0.938[GPa]で折れている。今回の24t@のプリプレグは保存状況がひどかったためまさかここまで持ちこたえるとは思っていなかった。
では、なぜ折れなかったのだろうか。同じ24t@を使用した昨年度のply構成[ 90 / 0 / 0 / +45 / -45 / F90 / F60 ]の桁(ただし90°は40t)は 0.938[GPa]で破壊している。これとの違いは、90°が40tであるということを除けば外側に90°が入っているか否かのみである。一概には言えないものの、外側の90°によって座屈が防がれ、0°繊維の圧縮強さ近くまでの曲げ応力に耐えることができたのかもしれない。また、このあとしばらくして、OBの方から「90°が2プライ入っているためにせん断力による桁のつぶれが緩和され、そのおかげで予想外に持ちこたえたのではないか。」との意見をいただいた。今回の実験だけでは判断がつかないので、今回の桁から外側の90°層を抜いたply構成を試してみる必要がある。
□結論
24tについては、最大曲げ応力が 1.28[GPa]になるまで荷重をかけたにも関わらず桁は折れなかったため、1年間劣悪な管理下に置かれていても強度的にはほぼ問題ないという結論に至った。ただ、ところどころ半硬化を起こしている部分があり、桁巻き時に巻きにくく、出来上がりも桁表面がボコボコになってしまうため、本番桁には向かない。
スパイラル巻きについてははじめてにも関わらず予想以上にきれいに巻くことができた。シートとシートの間隔も多少重なることはあってもほとんど開くことなく、これならいけそうである。しかし、5m弱巻くのに1時間半もかかってしまい、それはこれからの課題である。
今回は最大曲げ応力が 1.28[GPa]になるまで荷重をかけたにも関わらず桁は折れなかったが、これは考察にも書いたように、外側の90°によって座屈しにくくなったのか、それともせん断力による桁のつぶれが緩和されたためなのか。これを次回実験桁では今回の桁から外側の90°層を抜いたply構成、つまり[ 90 / 0 / 0 / +45 / -45 / F90 / F60 ]で破壊実験を行うことにする。これによって90°層の効果を評価してみたい。