幸田大会報告(飯塚)
2004年Meisterエコノムーブ部門代表の飯塚です。
11月13・14日に、愛知県幸田町にて2004WEMGP最終戦幸田大会が開催されました。私たちは、2004年度の活動を締めくくるこの大会に出場してきました。最後の最後までこのように遅れてしまいましたが、大会報告をさせていただきたいと思います。
成績
過去最高記録です。予選13位通過、決勝第4位となりました。このような順位に至るレース概要は後の説明に譲りまして、若輩チームである私たちをこのような好成績をあげることの出来るまでにサポートしていただいたスポンサーの皆々様へ、Meister一同心よりお礼申し上げます。
2004WEMGP最終戦にして、ようやく入賞することが出来ましたが、今大会においても表彰台に上れなかった点におきましては、やはり表彰台を目指して活動してきたものとして悔しいところではあります。しかし、決勝レースでのlucciolaの安定し、力強い走行を実現できたためか、2004MEPを遂行してきた身としては満足していることも事実です。安心とも言うのかもしれません。(注;MEP=Meister Econo move Project)
大会の詳細につきましては、こちらをご参照ください。
- http://www2.ogata.or.jp/wem/wemgp/04wemgp/04wemgp6.htm
- http://www.somos.jp/somosplan/circuit/circuittop.htm
- http://yrp-net.com/
- http://www.zdp.co.jp/
- http://www.zdp.co.jp/2004/20041122.html
作戦
11月3日の祝日に、幸田サーキット(大会会場)(Fig.1)にて公開練習が行われました。この幸田サーキットは今回が初めてエコノムーブのレース会場となるところでしたので、どのチームもコースの特性を知らないという点において、この公開練習でデータ・経験等を得ることは本番における強みになることは間違いありませんでした。できることならば私たちも参加したかったのではありますが、日帰りを余儀なくさせられることや、代表である私の都合などのもろもろの事情により、参加は諦めました。その代わり、設計主任である林原が視察に向かいました。
林原の視察を元に、決勝でどのようなペースで走れるのか、また走らなければ勝てないのかという大まかな見通しはつけることが出来ました。そこから駆動の減速比を決定しました。また、電池にあるエネルギーを時間内により多く引き出すことの出来るブースト回路の搭載も決めました。これはラストスパートをかけるためのものでもあります。
以上、目新しい技術を使ったわけでもない、(今や)非常にオーソドックスな装備と、走行計画を持ってレースに臨むことを決定しました。また、ここに書かれていない、その他の詳細なレース運びやエネルギーマネジメントはピットとドライバーが密に連絡を取り合いながら試行錯誤することにしました。しかし、実際は(携帯の不具合により)ドライバーとうまく連絡が取れず、ドライバーの技術と勘に頼るものとなりました。
製作
車体において大会に向けて準備するものは、白浜でほぼ完成した泥除け類(雨対対策)を完全に完成させることと、細かい金属パーツを1年生の金属加工練習も踏まえて作り直すことでした。本来であれば、このように大会直前に何か大変な物を製作しなければならないような状況ではないことが普通もしくは理想なのですが、秋田・菅生・豊田と、全てギリギリまでの製作を余儀なくされていたので、おかしな話ではありますが、何かを作らなくてはいけないのではないか?というような妙な錯覚がありました。
電気系では、今大会で私たちが始めて搭載するブースト回路を製作しました。また、毎大会ごとに計器の調子が思わしくないので、ハード・ソフトの両面の点検を行いました。
予選
今大会では、予選順位は公式予選時間内における最高LAPタイムで決められました。
公式予選では、なるべくいい順位につき、本番用電池の電圧降下曲線(lucciolaを幸田サーキットで走らせたときの電池の特性を表すもので、これがあると走行中の電池電圧から残りのエネルギーの予想ができます。)を得ることも目的としていたので、電池のある最初のうちにブースト回路も用いて最高LAPを刻み、その後はひたすらデータ収集のために走り続ける事としました。
スタート時刻になり、各チームピットロードから続々と出走します。私たちも早めに出走することが出来、早速最高LAPタイムを取りに行きました。決勝では一周2分±5秒を予定していたのですが、それよりも10秒以上早い1分40秒台を出すことが出来たので、他のチームもさほど変わらぬLAPだったことから安心していました。順位も初めは一桁真ん中あたりで、悪くはありませんでした。がしかし、予選が進むにつれてLAP争いが激化して行き、最終的に1位は1分30秒ものLAPをたたき出して来ました。そして私たちは13位にとどまりました。
予選開始後30分、それまで順調な走行をそ見せていたlucciolaが急に停車してしまいました。豊田大会までは大会前、競技中ともに何らかのトラブルに見舞われてしまうのがMEPの常でしたが、白浜大会で安定したレースをこなすことが出きていたので、この大会でも同じように何も起こらないだろう(起こらないで欲しい)と思っていただけに、「またか・・・」と、以前の私たちに戻ってしまうのではないかという不安が襲ってきました。
大会役員の人とともにすぐにlucciolaのもとへ向かいましたが、その途中で停車してしまった原因が分かりました。今大会における電気系では、普段は一つしかないブレーカーが二つあり、そのうちの一つが、走行中にoffになってしまったのでした。私と電気主任が現場に着くと、既に走り出す準備は出来ており、念のための車体の確認をおえすぐさまレースへ復帰しました(Fig.2)。回避できた些細なトラブルでしたが、致命的なミスでもなく、実はあらかじめ予想されていたことだったので、「不安」はやや和らぎ、レースへの手ごたえを感じ始めていました。
予選開始後1時間、またもやlucciolaが停車。しかも今度はスピンをしたとのことで、再び現場へ急行しました。lucciolaがスピンする前に他チームの2台が近くで接触事故を起こしていたので、運が悪ければ巻き込まれていたかもしれませんでしたが、幸い自らがスピンして停車しただけで周りに迷惑をかけることもありませんでした。
現場へ到着すると、そこにはハンドルの抜けた車体がありました。ハンドルの回転軸が、(完成してからの)度重なる振動のために徐々にずれてついにこの予選中に外れたのでした。この部品は前輪操舵系主任である私が設計したものなだけに、ショックでつい自ら手を出してはめ直してしまいました。しかし、これは反則だったのです。競技中、コース内で車体に不具合が生じた際には、ドライバーのみがその修復をすることが出来、ピットクルーが修理を許されるのはピット内に限られていました。
私の粗相により競技を続行するためにはピットへ車体を持ち帰ってからピットスタートをするしかありませんでしたが、残り時間があまりなかったことや、ハンドルへの不安があったために、この時点で予選を終えることにしました。
決勝
決勝に向けて、またいつものように宿へ戻ってからの作業を初めました。しかし、今大会では、抜けたハンドル軸の接着固定・雨対策の強化・データ解析・充電と、徹夜を要するようなものはほとんどありませんでした。
決勝での成績を左右する重要な作業は、データ解析と充電でした。データ解析によって、あらかじめ設定していた減速比・LAPなどが妥当かを評価し、また、ブースト回路を使うタイミングを見計らうための目安とすることを考えていました。しかし、機器の不具合により、データが取れてませんでした。充電では、どれだけ多くのエネルギーを貯めておくことが出来るのかが勝負になります。ただ、過充電すればするほどいいというものでもなく、しすぎれば逆に電池を壊してしまいかねない(壊すと失格になります)ので、いつもどおりやや控えめの温度に抑えたお湯に電池をつけて加温充電をしました。丁度、定格の電圧を上回ったころ(通常では満充電)、充電器が怪しい挙動を見せたので、安全のためここで過充電をやめました。なので狙っていたような充電は出来ませんでしたが、これが最善でした。
やるべきことがいつもよりはるかに少なかったため、決勝前夜では、メンバーの充電もすることが出来ました。(Fig.4)
決勝レースは他の大会同様、2時間の間にどれだけ長い距離を走れるかを競います。予選順位の順にグリットにつき、スタートを待ちます(Fig.5:(2)車体がグリット位置より前に出ています^^;反則になりそうだったので、自力でバックするように指示しましたw)。加速性能に乏しいエコノムーブの車両にくわえ、一周1,085mのこの幸田サーキットはカーブがたくさんあり幅が狭いことから、一斉にスタートすると後ろにある車体ほど渋滞気味になります。幸いそこまで後ろでなかった私たちは、順調なスタートをみせ、予定通りのLAPを刻みながら走行を続けました(Fig.6)。ここで私たちをわかせたのが、そのLAPでした。目標2分±5秒ということでしたが、前日は2分強だったのに対し今度は2分弱だったのです。スターティンググリットが先行していたことですんなり上位を走っていたチームとLAPでの差はありませんでした。むしろ、それに迫る勢いを持っていました。とはいっても13位からのスタート、順位をつめるには時間がかかりました。それでもじわりじわりと安定したLAPを刻みながら先行する車体を追い抜き、気が付けば順位は一桁になっており、応援に来てくれた人たちも興奮し始めていました。
秋田大会では、工業高校や高専の車体約10台に負けていたのに対し、今大会では当たり前のように周回遅れにさせてゆきました。しかし、私たちが見ていたのはそのような本来勝って当然のチームではなく、いわゆる強豪チームでした。今大会においてはおおよそ6台の上位常連の車体がありました。決勝開始1時間後、lucciolaはすでに7位にまで追い上げていました。菅生大会で優勝した車体はその時点でlucciolaを追う立場にありました。次に私たちが捕らえようとしていたのは2003WEMGPチャンピオンの車体(Fig.7)(正確には、大幅な改造が施されていますが)でした。
決勝も残り30分を切り、私たちのチームはいつブーストを入れるかで頭を悩ませていました。ドライバーと連絡が取れなかった(携帯の不具合)ために電池の残量が分からなかったからです。ブーストは電池を無理やり消費する回路であるので、タイミングを間違えると完走できなくなるばかりか、逆効果になる恐れがあったためです。この時間になっても未だ下がることのないLAPから考えて電池は思いのほか残っているのではないか?という考えが先行しました。そこで残り20分にしてブーストを入れるよう指示することにしました。lucciolaはLAPを10秒以上上げ、ついに5位に上がりました(Fig.8)。そして、すぐ前を某自動車メーカーのプライベートチームの4位車体が走っていました(Fig.9)。レース終了のチェッカーを受けたとき、lucciolaは4位になっていました(Fig.10)。
大会後のドライバーの話によると、時間が経過してもLAPが落ちなかったのは、アクセルをあけている時間を徐々に長くしていたためであり(コース内には若干の起伏があるため、くだりは惰性で走ってました)、電池は思いのほか残っているわけではなかったことが分かりました。とはいえ、完走することが出来、順位を二つ上げることが出来たことから考えて、偶然ではありますが、もっともよいタイミングでブーストを入れることが出来たと分かりました。そして、4位という成績を残せたのは、丸1年をかけてようやく完成形へたどり着いた上位チームと遜色のない車体が出来上がっていたことと、的確な走行ラインを確実に走りながらエネルギーマネジメントまでをドライバーこなすことが出来たためでした。(Fig.11)
反省
最終戦にしてようやくこのような成績を残すことが出来、その点でとても有意義な大会でした。しかし、謙虚に振り返ってみれば4位という順位は非常に不安定な条件の上に勝ち取ることが出来たものだとわかります。それは、11月になってもまともにテストをこなすことが出来ていないために、車体の限界性能を未だに分からずにいることや、計測機器が安定した挙動を未だに見せていないこと、携帯電話ですらまともに連絡が取れていないということです。これだけのことが欠けていながらにして4位を勝ち得たことは幸運だったといわれても仕方ありません。経験値的なものは1年をかけてあげてゆくことが出来ました。それはやはり5戦もの大会に挑戦してきたためだったといえます。未だに欠けていることは先に述べたような基本的だけれども不可欠な準備・ノウハウです。逆に、これがそろえば表彰台に届くのかもしれません。
このような反省は、去年の時点でのそれとあまり変わりません。私たちは去年の教訓を活かしきれていなかったのです。それはやはり多くのことに挑戦しすぎたことが原因であります。自作DDモータ製作、人数不足にして複雑な作業を増やしたことなど様々です。このようなことになったのは、代表である私がしっかりとしたビジョンを持ち見切りをつけてチームを引っ張らなかったためであります。とても反省しています。そして来年こそはこれを繰り返さぬよう引継ぎに気をつけます。
2004年度MEPが活動を始めてから白浜大会を迎えるまで、休む間もないといっていいほど作業に明け暮れ、不甲斐ない結果に頭を悩ませながら活動をしてきました。苦しいことばかりではなくもちろん楽しいこともたくさんありました。結果を残すという意味では、今年の様々な挑戦は意味がなかった・逆効果と言えるものがありますが、Meisterというサークルの1部門の活動として、全くの間違いというわけではなく、今後の活動につながる意味のある挑戦でもありました。こう言えるのも最後にして満足の行く結果を残せたためだと思いますが、やはり、今大会でも先に述べたような反省があり、これを来年へつなげることが今大会の本当の役割であると考えます。
お礼
今大会にもたくさんの応援メンバーが駆けつけてくれました。かわるがわるに激励を受けたりして、レースへのモチベーション、責任感が一層増しました。また、順位を上げ続けるlucciolaに歓声を上げ応援をしてくれました。今大会がとても有意義で楽しいものとなったのはこのような応援もあったためであることは間違いありませんでした。みんな、本当にありがとう。そしてこれからもエコノムーブの応援をよろしくお願いします。